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2018.4.25更新

Vol.32「庭と家、つながって豊かな暮らし」

建築家 深谷朋子さんの設計される住宅は、時間がゆっくりと流れている印象を受けます。なぜかな…と考えたら、そこには暮らしとつながっている庭がありました。庭の植物や、やってくる生き物たちと、季節を感じながら、毎日を大切に過ごしていける。そんな住宅だからでしょうか。
今回は、深谷さんに、「家づくりと庭」を中心にお聞きします。

深谷 朋子(ふかや ともこ)さん
関西の学校を卒業後1年ほど、阪神大震災で被災した神戸長田区真野地区で共同住宅の建替にボランティアで関わる。「役割を担える力をつけたい」と、奈良や東京の設計事務所などで修業。その間、ネパール・インドへの旅行中に、医療法人phect-NEPALカトマンドゥモデル病院移転計画および診療所・地域指導員養成センターの基本設計に携わる。2007年F設計室設立。一級建築士。中部建築賞入賞(2009年)、すまいる愛知住宅賞名古屋市長賞(2009年)、同住宅金融支援機構東海支店長賞(2014年)など受賞。

2.万場山の家

畑を楽しみ、シンプルに暮らしたい

「万場山の家」は、深谷さんが独立後、最初に設計された家です。クライアントはどんな方ですか?

深谷さん

私の叔父と叔母で、夫婦二人で九州にいたのですが、定年退職して戻ってくる家を建ててほしいという依頼でした。30坪を超えると固定資産税が高くなるという思い込みがあって(笑)、敷地は126坪あるのですが、建坪は30坪でというのが条件でした。

平屋がご希望でした?

深谷さん

はい。平屋が要望でした。でもロフトにできるスペースがキッチンの上にできたのでロフトも一部あります。要望はそんなに多くはありませんでした。畑も楽しみたいので、そのスペースを十分にとってほしい。シンプルに暮らしたい。メンテナンスがたいへんでないようにと。

「憩う庭」「眺める庭」

庭の方から住宅を見たところ。手前は桜ですか? 立派ですね。

深谷さん

祖母が植えた樹齢50年の桜です。この木だけがある更地でした。

写真は今年のお花見の様子。お家で花見ができるなんて、素晴らしい! まさに「憩う庭」ですね。広い敷地に30坪の家をどのように配置するかが大切だったということですね。

深谷さん

はい。家の中の間取りだけじゃなくて庭も含めて計画します。庭や間取りがどうつながり、空間に奥行きができ、またそのスケール感は適当か、といったことが私にとってとても需要な要素です。敷地の大きさに対して家は「30坪でいいよ」ということから生まれた豊かさがあると思います。

この写真は、この住宅の庭との関係を語っている写真ですね。部屋から庭が十分に眺められる窓があって。

深谷さん

手前の庭は「眺める庭」として、残土を利用した盛り土をして奥行を与えています。その向こうが「憩う庭」。その奥に「畑」があります

「前庭」から見る―屋根と外壁

深谷さん

こちらは道路に面した「前庭」。砂利を敷いた駐車場になっています。

軒が深いですね。屋根の形も個性的です。

深谷さん

東南の隣の土地が一段上がっていて、さらに高い建物が建っているので、とても日当たりの悪い敷地なんです。それで、屋根を少しずらして上から光が入るようにしています。

外壁もとても表情があります。素材は何ですか?

深谷さん

細かい軽石や火山灰が原料の天然素材です。内部も同じ素材の内装仕上げ材です。塗厚は5mmくらいですが、ひじょうに吸湿性能が高い素材です。

耐久性もあるのですか。

深谷さん

ぼろぼろ崩れてくるものではありません。劣化や退色はしにくいです。この家は和風感があるし、ここはもともと山だったところで、赤土なので、何となく赤にしたいなと思って、この色を選びました。

「通り庭」「坪庭」

深谷さん

こちらは、前庭からの「通り庭」です。写真の椅子の手前に玄関がありますが、来客は通り庭を通って南の縁側から入ることが多いです。

こちらからですね。縁側は、庭と室内をつなぐのにちょうど良い高さのように思います。左の建物が、お二人が日中を過ごす部屋。ちょっと屋根が低くなった廊下と結ばれている正面の建物は寝室です。

深谷さん

建物をL字型に配置することで、残りの敷地が単なる余白でなく、それぞれ意味を持つ庭となっています。廊下の向こう側は、居室と個室を分ける「坪庭」になっています。寝室は、離れのような落ち着く場としました。

こちらは、寝室から庭を見たところ。

深谷さん

寝室には、桜の木を一枚の絵のように見る高窓も設けてあります。

木製建具と吉野の磨き丸太

庭から居室をみたところです。軒下の梁がすごいですね。

深谷さん

吉野の磨き丸太です。吉野に行って林業組合で教えてもらって買ってきました。全部で6本使っています。

建具は全て木製なのですか。

深谷さん

サービスヤードの建具以外は木製です。コストはかかりますが、景色という絵の額縁なので、メインの建具一つでもいいので木製で、と思っています。

大きな木製の建具が戸袋の中に収まって、窓を大きく開放できるのですね。

広くて心地良い「みんながいちばん長くいる場所」

こちらがみんながいちばん長くいる居室。高窓からの光がやさしいです。

深谷さん

30坪の中で豊かに暮らすというときには、こういう場所がどれだけ心地良いかがもっとも重要だと思っています。ですから、ここができるだけ広く感じられるようにつくっています。

座卓というのも広く感じますね。

深谷さん

この家族は床の民族なんです(笑)。ご飯は床に座って食べたいと。ビーズクッションとかは置いてあって、寝そべってテレビを見て、「あ〜!この部屋は人間をだめにする」とか言ってます(笑)。

あはは、すごく居心地いい空間なんですね。

深谷さん

広く見せるために意識しているのは、「見えざる部分をつくる」ことと、「回れる動線」です。「見えざる部分をつくる」というのは、影になっていてどこまでも続いているかよくわからないような部分を空間の中につくります。そうすると、空間を実際よりも意識の中でふくらまして感じます。

なるほど!

深谷さん

「回れる動線」というのは、行き止まりをなるべく作らないということです。万場山の家だと、キッチン→サービス→洗面所→板の間とぐるぐる回れるようになっています。写真洗面所の左側は壁に見えますが、実は扉になっていて、サービス空間とつながっています。

くつろぎの部屋―和室

和室を見たところ。和室と板の間が一体となっているのですね。和室の窓の高さと大きさも、計算されたものなのでしょう?

深谷さん

風景を切り取ると同時に、通り庭を通るときには室内の雰囲気を感じ、夜は灯りがもれて優しい雰囲気になります。

板の間と和室との間に少し段差があります。

深谷さん

段差は25cmです。30cmだと空間として分断された感じがしますし、行ったり来たりするのがお年寄りだと「よいしょ」という感じになります。それより低いとつまずきやすい。この高さだと、段差に腰かけて移動できます。段差部分は収納になっています。

冬にはこのように、障子と襖で仕切れるのですね。

深谷さん

はい。この家の南側の大開口は、アルミサッシの雨戸、網戸、ガラス、太鼓障子となっています。

太鼓障子とは?

深谷さん

障子の枠の両側に障子紙を張ったものです。間に空気層がありますから、断熱性が高く、とてもあたたかいんです。

障子の上が開いていて、天井の高い板の間とつながっています。寒くないのですか?

深谷さん

私の設計する家はどれも天井が高いですが、床暖房もあるし、寒いということはないです。昔と違い、ペアガラスと断熱材がかなり進化しています。それによって、ワンルームで天井の高い家に暮らせる環境になってきたと思います。

なるほど!お庭との関係だけではなく、住みやすさという点からもさまざまな工夫がある住宅ですが、時間になってしまいました。次回、「ひとつ屋根の家」で、そのあたりもご紹介ください!

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