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2018.4.11更新

Vol.32「庭と家、つながって豊かな暮らし」

建築家 深谷朋子さんの設計される住宅は、時間がゆっくりと流れている印象を受けます。なぜかな…と考えたら、そこには暮らしとつながっている庭がありました。庭の植物や、やってくる生き物たちと、季節を感じながら、毎日を大切に過ごしていける。そんな住宅だからでしょうか。
今回は、深谷さんに、「家づくりと庭」を中心にお聞きします。

深谷 朋子(ふかや ともこ)さん
関西の学校を卒業後1年ほど、阪神大震災で被災した神戸長田区真野地区で共同住宅の建替にボランティアで関わる。「役割を担える力をつけたい」と、奈良や東京の設計事務所などで修業。その間、ネパール・インドへの旅行中に、医療法人phect-NEPALカトマンドゥモデル病院移転計画および診療所・地域指導員養成センターの基本設計に携わる。2007年F設計室設立。一級建築士。中部建築賞入賞(2009年)、すまいる愛知住宅賞名古屋市長賞(2009年)、同住宅金融支援機構東海支店長賞(2014年)など受賞。

1.ふたつ屋根の家

心地いい家をつくるために、庭はとても大事

深谷さんの設計される住宅はどれも、庭と一体になっていて素敵だなあと思います。窓が額縁みたいで、そこから見る庭の緑、入ってくる光と影、それらを活かす床、壁…、とても落ち着く空間です。まず「ふたつ屋根の家」をご紹介いただきますが、計画の最初の段階から、庭づくりも含めて考えていかれるのですね?

深谷さん

心地いい家をつくるために、私にとって庭はとても大事。家の中で提供できる豊かさより、庭が提供する豊かさの方がむしろ大きいと思っているんです。庭と家とがどうつながるかは、基本プランの段階で、そうとう練り込みます。

庭の豊かさとは何でしょう?

深谷さん

人がつくったものは直線がほとんどですが、自然界は曲線ばかりで、直線はあまりありません。人の手だけではつくり出せない豊かさが、庭にはあると思います。木々のさざめき、鳥のさえずり、新緑や落葉のめぐる季節、月日を重ねる木の成長…そういったものを感じる暮らしは豊かでしょう?

そうですね。

深谷さん

庭に木が一本あるだけでも、自然の営みや土地とつながっている感覚が生まれうると思います。それに、生活全体をプランニングしようとすると、家の中のデザインだけでなくて、駐車スペース、家へのアプローチ、物干し場、サービスコートなど、庭の配置はとても大切になってきます。

確かにそうですね。でも、庭って後回しになりがちです。まず家を建てて、庭は後からボチボチやろうとか。資金的にも、なかなか庭のところまで考えるゆとりがない場合が多いです。

深谷さん

私は、クライアントに、自分が設計した住宅を見ていただきます。「これだけ庭をつくると、リビングにいても毎日の生活が豊かになりますよ」と。その場で「あ、これだけ違うんだ」と実感していただくと、ご理解いただけます。

庭の豊かさを体感するんですね。

癒される住宅

こちらは「ふたつ屋根の家」を南側から見たところ。

深谷さん

母屋のほかに寝室棟、録音スタジオ、茶室があり、広くはありませんが、真ん中にある庭がそれらをつないでいます。このクライアントはご夫婦そろってお仕事がとても忙しい。だからでしょうか、住宅に対して求めているものがクリアでした。

それは何ですか?

深谷さん

「癒し」です。具体的には、ご主人は薪ストーブと音楽と庭、奥様はキッチンでした。ご主人は、仕事から帰ってきたら毎晩、ストーブの火を入れます。火を見ながら、本を読んだり、好きな音楽を聴いたりされます。

素敵です。

深谷さん

奥様もとてもお仕事が忙しいのですが、料理をするのが大好きで、それは大切な気分転換の時間。ですから、庭を眺めながら料理をし、食事をしたいというご希望でした。

庭が「癒し」になっているんですね。

高台のバルコニーからの眺望

深谷さん

敷地は高台の傾斜地で、「その一番高いところには母屋を建て、そこから景色を眺めたい」という強い要望がありました。

きっと夜景もきれいでしょう。

深谷さん

南の開口部の先には広いバルコニーがあります。朝ご飯をここで食べることもあるそうです。

ひとつの庭をいろいろな方向から楽しむ

深谷さん

リビングからダイニングを見たところです。

ダイニングは北側の庭に面しているのですね。

深谷さん

母屋から見ると庭は北側になります。北側の庭は順光になって、とてもきれいに見えるのですよ。花や葉も、太陽のあるこちら側に表の顔を向けてくれます。

その庭がより良く見えるように、窓の位置と形を決めているんですね。

深谷さん

こちらは、寝室棟の寝室から見た同じ庭です。高さ的には中段になります。

緑がきれい! 朝、目が覚めたら気持ちがいいでしょう。窓はフィックスですか?

深谷さん

いいえ。格子網戸とガラス戸、そしてプリーツスクリーンも降りてきます。風を入れることもできるし、昼間でも真っ暗にすることもできます。庭に開くだけでなく、光や外からの視線を必要に応じて調節できることの配慮は必要不可欠です。

こちらはお茶室。美しい…。

深谷さん

東側の一番低い所から、西向きに同じ庭を見ています。夕暮れ時には西日が木々を透過して当たります。

見る方向、高さ、開口部の位置やデザインなどで、同じ庭でもいろいろな楽しみ方ができるんですね。このクライアントも、深谷さん設計の他の住宅をご覧になっているのですか?

深谷さん

はい。次回ご紹介する「万場山の家」を見に来てくださって、設計の依頼を決めてくださいました。

そうですか! 次回が楽しみです。よろしくお願いします!

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