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2017.10.11更新

Vol.29「『家族のストーリー』と『施主力』がつくる家」

建築家・南川祐輝さんは、佐久島の「おひるねハウス」の作者。「エッ! あのアート作品の?」と思われる方がたくさんいらっしゃるでしょう。南川さんが設計する住宅も、透明感あふれるイメージ。「魅力的な家はどうやったらできる?」という問いに、「設計士って鏡みたいな存在。良い家づくりには『家族のスト−リー』と『施主力』が必要なんですよ」との答え。それって、いったいどんなもの? 南川さん設計の建築をご紹介いただきながら考えます。

南川 祐輝 (みなみかわ ゆうき)さん
学生時代、設計するときのテーマが「向こうに何かを感じる」だったそう。自分の向こう側に、自分とは違う何かを感じる―。それは、「おひるねハウス」にも、住宅の設計にも、脈々と流れているテーマのように思えます。一方で、「自宅を設計したとき、自分のこだわりのなさに愕然とした。お客さんがいないとだめなんですよ」と笑う南川さん。お施主さんを中心に、設計者、施工者がチームで家づくりに取り組む。そのバランスの良さが魅力的な住宅をつくるというのが信条。
南川祐輝建築事務所主宰。第9回・第20回愛知まちなみ建築賞(2001年・2012年)、第19回すまいる愛知住宅賞(2007年)、第21回同愛知県知事賞(2009年)、第28回同名古屋市長賞(2016年)、 第44回中部建築賞(2012年)など受賞多数。三河・佐久島アートプラン21のプロジェクトとして建てられた「おひるねハウス in 佐久島」、新潟 水と土の芸術祭2009の「おひるねハウス in 新潟」などの作品制作や展覧会も開催。2008年〜愛知県立芸術大学非常勤講師。

1.「「おひるねハウス」から見えるもの」

遠くを感じる「おひるねハウス」

「おひるねハウス」ができた当時、佐久島に見に行きました。あの建築があの場所につくり出す伸びやかさ、独特の時間、そういうものは南川さんが設計される住宅にも共通しているように思います。

南川さん

最初の「おひるねハウス」は2004年につくりました。佐久島には以前から通っていて、やってみないかと言われたんです。佐久島に行くと時間の流れが穏やかなので、単純に眠くなるんですよ。体の緊張がゆるんでいくみたいな島独特の空間、時間の流れみたいなものを形にする時に、「海を見ながら昼寝をするというのはどう?」と話をして。そしたら「面白いね」と言われて、できたんです。

広大な海岸にポツンと「おひるねハウス」ができて、小さな建築ですけど、それから佐久島が変わっていきました。

南川さん

「おひるねハウス」があって、見る人がいて、その向こうに海があって、その向こうに太平洋が抜けているという、遠くを感じることが僕にとってはすごく大事。毎日海を見ている島の人でも、もしかしたら普段見ているのとは違う海が見えるかもしれない。「おひるねハウス」は住宅とは違って、依頼する側にもイメージがなかったので、ど真ん中のストレートを投げている感覚でした。

建築をベースに、場所にアプローチする

そういった作品もつくられているので、南川さんはアーティストだと言う方も多いですが、どういう住宅をめざしておられますか。

南川さん

住宅はこうありたいという強い意志、こうでなくちゃというのは、実は自分の中にあまりないんです。

エッ! そうなんですか!?

南川さん

お施主さんがいて、お施主さんのこういう家に住みたいという要望や、敷地、場所、予算、家族構成などに大きく影響されて設計をするんですけど…、自分でもよくわからない(笑)。

そうなんですか!?(笑)

南川さん

「おひるねハウス」も、その後につくった「イーストハウス」も、建築にこだわってできたものなんです。あくまで建築をベースに、場所にアプローチして何ができるかを考えているんですね。

おひるねハウス in 新潟 イーストハウス

グラフィックデザイナーのオフィス

住宅の設計で、アート的なものを大事にされているということはないんですか?

南川さん

学生時代に現代美術のギャラリーによく通っていて、そこでいろんな人と出会ってしゃべっていたことに影響を受けている部分は大きいと思います。
これはギャラリーで出会ったグラフィックデザイナーのオフィス。20年以上前の仕事です。美術品のコレクターで、自分の事務所に作品を飾れるスペースがほしいということで、外周は全部壁です。

なるほど。

映画『となりのトトロ』の森をつくる

南川さん

この後、「あうら」というカフェ兼ギャラリーを設計しました。美術家の国島征二氏のドローイングや彫刻石のテーブルなどが常設されています。

2001年の竣工で、話題になった建築でした。

南川さん

これは今から3年ぐらい前に撮った写真です。木が茂って建物が見えないでしょ。店の中に入ると森の中にいる感じです。

すごいですね!

南川さん

このお施主さんには「施主力」がありました。ご希望は、「何となく人が集まる場所をつくりたい」「南側を向いて仕事がしたい」「雲が見えて風が気持ちよく入ってほしい」というぐらい。それを聞いて僕は、「建物がほしいんじゃなくて、いい空気がほしいんだよね」と言いました。すると、「そうそう」と。

お施主さんが意識しないでいたことを、南川さんが引き出したんですね。

南川さん

映画『となりのトトロ』でメイとサツキが夜中に畑に種を植えるんですが、そのシーンのイメージを二人で話していたんです。敷地を森にしようと。神社って遠くから見てもわかるじゃないですか、樹がモコモコしてるから。そんなイメージだったんです。

年月を経て、見事にそうなりましたね。

外壁に木を張って「見立て」としての森に

南川さん

敷地全体に植栽した中に建物を埋め込もうと。ただ南北に長い土地なので、南と北には庭ができますが、東西には建物の壁が出てきちゃった。だったら「見立て」としての森にしようということで、鉄骨造ですが、外壁に木を張っています。

なるほど。それで外壁に木を使ったんですね。

南川さん

そのころは年齢も若いし、鼻息が荒かったので、いろんなことをやりたかった。でも、その後、そういうつくり方はつくり手のエゴで、何か間違っているとも思った。うまく手が動かなくなった時期があって…。少し手ごたえを感じたのが、「安城の家(木箱)」です。

では次回は、「安城の家(木箱)」のご紹介からお願いします。楽しみです!

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