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2017.8.9更新

Vol.28「ほかとはちょっと、ちがう家」

漠然とだけれど、「せっかく家を建てるのだから、ほかとはちょっとちがう家がいいな…」。今回は、そう考えた若いご夫婦2組の住宅をご紹介します。といっても、奇抜な住宅というわけではありません。「お客様の暮らしがより豊かになる建物を提案していく」という、若き建築家・岩田知洋さん、山上弘さんによる住宅です。今回は、山上さんにお話をうかがいました。

+岩田友洋+山上弘建築設計事務所
(いわたともひろ・やまがみひろし けんちくせっけいじむしょ)

お二人は、高校の建築学科の同級生。卒業後は別々の専門学校に行き、就職し、5年前、27歳で独立しました。共同で事務所を始めたのは、「たまたま独立の時期が同じだったのと、ディスカッションしながらチームで建築をつくっていきたいという思いがあって」とのこと。ていねいに、果敢に、住宅設計にチャレンジしています。
一級建築士。2014 U-35 Glass Architecture Competition 優秀賞、2016 第28回すまいる愛知住宅賞 住宅金融支援機構東海支店長賞受賞。

1.「何もなかった場所に「奥」をつくる (篠木の家)」

チームとして建築をつくっていきたい

「+岩田友洋+山上弘建築設計事務所事務所」の最初の「+」には、何か意味が込められていますか?

山上さん

いろんな人たちと「ものづくり」をしたいという思いを込めています。

というと?

山上さん

チームとして建築をつくっていきたいんです。家づくりはお客様が主体で、実際には代々伝わってきた技術を持つ工務店の大工さんがつくります。生活の価値観などを提案するのが設計者だと思っているからです。

設計事務所としては、意匠と構造というように担当があるわけではなく、二人で一つの物件をいろんな角度から検討しながらつくっていくのですね?

山上さん

初期プランは事務所全体でやって、進む方向性が決まると、それ以降は窓口は一つです。その方がスピード感があるので。

なるほど!

広い敷地を感じられる家

個人邸ですか?お店とか美術館みたいですね。

山上さん

周りの方は集会所ができると思っていて(笑)。車もいっぱい停められますし。

敷地が広いんですね。

山上さん

敷地は180坪、本来なら家が3軒建つくらいの広さです。お施主さんは僕たちの同級生で、家族3人。望まれていたことは、そんなに多くありませんでした。大きさと予算は一般的な住宅と同じで。そして「ほかの家とはちょっと、ちがった家がほしい」と。

ほう!

山上さん

提案したのは、広い敷地を感じられる家です。それが新しい価値観につながって、気持ちのいい生活ができるんじゃないかと考えました。

家自体は大きくないけれど、広い敷地を感じる家ということですか?

山上さん

外観は閉じられたように見えますが、リビングから正面の公園が見えますし、いろんなところに視線が抜けるようになっています。

周りには家が建てこんでいます。逆に言えば、周りの視線も感じますよね。

山上さん

工事中もいろんな方が気さくに話かけてくださる、人と人との距離が近い街でした。プライバシーを守って内部で完結させるよりは、セミオープンにして敷地全体を感じながら、適度に街の人とコミュニケーションを取る家でもいいのかなと考えました。

お施主さんはどうでしたか?

山上さん

プライバシーについては、お客様にゆだねることにしています。このお客様は、開いても大丈夫、逆に閉じたくないということだったんです。

2つの棟と中庭のような部屋

右手の扉が玄関。2つの棟が印象的ですね。真ん中の抜けている部分は中庭になっているんですか?

山上さん

サッシを閉じて内部のように使えるので、実際は家の中です。

ここですね! 外みたいですが、家の中。透明ガラスのサッシがあるんですね。

山上さん

閉じることもできますし、窓を開けて網戸にもできます。この間も陽射しの強い日におじゃましましたが、日陰になっていることと、四方に窓が開いているのでしっかり風も抜けて、冷房もいらないくらい涼しかったです。

2つの棟は用途が違うのですか?

山上さん

右手がLDKです。真ん中のスペースを介して、反対側は「フリースペース」と呼んでいますが、グランドピアノが置いてある部屋になっています。

おもしろいですね。こういう例はあまり見たことがないです。「敷地を感じる」って最初におっしゃった意味がよくわかります。

設計のスタートは「敷地に対して住宅はどうあるべきか」

山上さん

何より、建物を建てることで「奥行」をつくりたかったのです。何もない場所に「奥」という濃度を与える―つまり、こちら側と中間地点、そのまた向こうと、層になって重なる部屋をつくることで、「奥行が生まれて広さを感じる」という設計をめざしました。

手前の部屋、その向こうの屋外のような部屋、さらにその向こうの部屋、そして屋外へ。視線が外へ外へと抜けていきますね。

山上さん

屋根も、一回折り下げて、もう一回上げるような形で、奥行を与えています。

なるほど!最初にこのプランを提案した時、お施主さんは驚かれませんでしたか?

山上さん

どうだったかなぁ(笑)。でも、ほぼ最初の提案通りにでき上がっています。

まさに、「ほかとはちょっと、ちがう家」ですから、きっとご満足だったのでしょう。今回のように敷地に余裕があると、逆に難しいことはないですか?

山上さん

確かに、狭い敷地で空間をどう広く見せるか、外を取り込むかという住宅が多いです。ただ、「敷地に対して住宅はどうあるべきか」というところから設計がスタートするのが僕らの特徴です。敷地に対する合理性をどう見つけるかが建築家の仕事かなと思っていますから。

その答えが、今回の場合は、「奥行」をつくり「敷地を感じる」ということだったのですね。次回は室内を中心にご紹介いただきます。よろしくお願いします。

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