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2017.4.12更新

Vol.26「住まいへの強い思いを形にする」

古い家より新しい家がいい、街なかの小さい家より郊外の大きな家がいい−。そういった住まい手の意識が「最近ちょっと変わってきたようで、面白いなと思っています」とおっしゃるのは、建築家・浅井裕雄さん。今回は、住まい手の、住宅や土地やライフスタイルへの強い思い入れを形にした、個性的な住宅を紹介していただきます。

浅井 裕雄(あさい ひろお)さん
「長く愛し続けてもらえるデザインをめざします」という浅井さんが設計された住宅は、それぞれに住まい手の考えがしっかりと出た「存在感」を感じます。住まい手の話にじっくりと耳をかたむけ、ともにアイデアを出し合いながら家づくりを楽しんでいく―。そんな様子が感じられる住宅たちです。
㈲裕建築計画代表取締役。一級建築士。第41回、43回、45回中部建築賞、第21回愛知まちなみ建築賞、第25回、28回すまいる愛知住宅賞など受賞多数。中部大学非常勤講師。

1.「思い入れのある住宅を小さくして住む」

「愛着ある建物を残していけたら」という思い

浅井さんは新築の建物もたくさん設計されていますが、リノベーションも手掛けておられますね。2013年にさまざまな賞を受賞された住宅もそうでした。

浅井さん

2011年、ちょうど震災の後に、古い工場を住宅に変えられないかというご相談がありました。昔だったら、全部壊して新しくした方が安いよねという感覚があったと思うんです。そうではなくて、物に対しての考え方がちょっと変化してきたのかな。

震災の影響もあったのでしょうか。

浅井さん

当時、リノベーションのモデルで賞がたくさんいただけると思っていなかったので、世の中がそういうニーズに向かっているんだろうなという気はしました。

愛着ある建物を何とか残していきたいとか?

浅井さん

そうですね。2年くらい前にも、お父さんが経営していた鉄工所を住宅にできませんかという依頼がありました。ようやく先週引き渡したのですが、それは、工場の中に家を挿入するようなプランでした。「それも面白いね」って共感できる人たちが増えてきたというのはすごく感じます。

3階建ての大きな家を平屋に「減築」する

こちらはどういう住宅ですか? オブジェのような、らせん階段がありますが。

浅井さん

こちらは「減築」です。

「減築」?

浅井さん

3階建の大きな鉄骨造の家だったのですが、メンテナンスが大変だから何とかできないかというご相談でした。それで、2階、3階部分をカットして、木造の屋根をかけて平屋にしたのです。

そうなんですか。「減築」は増えていますか。

浅井さん

最近はありますね。全撤去して木造の小さい家を建てた方が、お値打ちにできた可能性はあります。でも、ご両親と息子さんがお金を出し合ってつくった家で、全部なくなるのは寂しい。どうやって残すかというお話でした。

住まい手に、家に対する思い入れがあるんですね。

浅井さん

何とか残して使いたいけれど、お施主さんに具体的なアイデアがあるわけじゃない。そこで、僕らがいろいろ提案して、話し合ってつくっていきました。ご家族の思い入れをうまくつなぎ合わせることができたと思います。

らせん階段は以前の家のメモリアルなんですね! あれこれ相談しながらつくるのも楽しそうです。

浅井さん

面白がってくださったと思います。

立派な庭を身近に

平屋にしても大きな住宅ですよね。

浅井さん

そうなんです。お父さんがつくった庭も立派でしたが、以前は2階、3階が生活のメインでしたから、ご家族はその庭を見て生活していなかった。せっかくの庭を生かしましょうというのも提案の一つでした。

1階に下りてきて、しかも庭に向けた開口部がありますから、庭が身近になりましたね。お父様もお喜びでしょう。

浅井さん

施主は何でも自分でやられる人で、庭工事もご自分でやっていました。

エーッ!

浅井さん

アプローチも、僕らが現場で線を引いて、「ちょっとこの石がじゃまだよね」と言ったら、チェーンで上げて移動してくれました。

普通はできませんけれど(笑)。

浅井さん

この施主はできるんです(笑)。ここに楓があった方がいいと移植したり、玉砂利を見つけてきて敷きつめたり、ご自分でも楽しんでいました。

施主と一緒につくっていく

浅井さん

もともとセンスのいい方なんです。たとえば、写真の真ん中に見える鉄骨の柱。紺色ですが、決めたのは施主です。

そうなんですか。

浅井さん

最初は僕ら、「黒かグレーかな」と言ってたんですが、施主が「この色はどう?」と。「うちの事務所だったら使わないけど、トライしたら面白いかも」というのでやってみたら、面白かった。

確かに。

浅井さん

そういう強い意志がある人でしたから、僕たちも楽しかったです。ここはインナーテラス。水色っぽい壁の色は、日本の伝統色から選びました。この色の使い方が提案できたのも、施主のおかげです。

インナーテラスというのは?

浅井さん

風が抜けますから、半屋外として使ってもらおうと。もちろん仕切ることもできます。

薪ストーブがありますね。

浅井さん

はい。冬は陽が入ってくるので、扉を閉めておけば暖かいのですけれどね。

向こうに見えるのは和室ですか?

浅井さん

はい。この和室は、以前のまま残しました。サッシで囲まれて丁寧に保存されているように見えると思います。

面白いですね。

太い鉄骨をダイナミックに見せて

浅井さん

インナーテラスの右が仏間の和室、左が普段の生活の場であるLDK、寝室、子ども部屋、水廻りスペースになっています。

構造の鉄骨が見えています。太いですね。

浅井さん

3階建でしたからね。だから、前は天井で隠れていましたが、あえて見せようと。「こんなのが入っていたの?」と、奥さんが驚いていました。それに負けないくらいの垂木をかけて杉板で見せています。

こちらは和室からLDKの方を見たところ。インナーテラスの向こうにリビングがあります。

浅井さん

和室は、もともとあった座敷と縁側を残したもので、欄間(らんま)や長押(なげし)はそのままにしています。天井を取り払って、大きい屋根が覆っているのがわかるようにしました。

よくわかります。いろいろなところで今までの家の記憶をつなぎながら、ダイナミックで大らかな住宅に生まれ変わりました。「減築」という言葉も覚えておきたいと思います。

次回は、住まい手の「街なかでずっと住み続けたい」という気持ちを形にした住宅をご紹介いただきます!

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