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2016.8.10更新

Vol.22「開放的に、プライバシーと安全を確保する家」

今回ご紹介するのは、建築家・諸江一紀さん設計の住宅4戸。街に向かって開放的でありながら、プライバシーや安全をしっかり確保できる住宅です。外から見るとオープン。でも、外部の目を気にしてレースのカーテンを閉めて暮らさなくてもいい家。諸江さんは、それぞれの住宅の環境に応じて、さまざまな手法でそれを実現しています。

諸江 一紀さん
「住宅は自分のものであると同時に街全体のもの」とおっしゃる諸江さん。それはわかっているけれど、街の環境のために自分の家が不便になるのも抵抗があるなぁと思ったりして。でも、それは違っていました。諸江さんの設計する「街に開放された家」は、住まいの中に外の環境を上手に取り込む、気持ちの良い住宅でした。お施主さんのためのチャレンジングな設計を、楽しんでなさっているように感じます。諸江一紀建築設計事務所主宰。すまいる愛知住宅賞愛知県住宅供給公社理事長賞、日本建築学会東海賞など受賞。名古屋大学、首都大学東京、名城大学、名古屋造形大学、愛知工業大学非常勤講師。

1.「尾張旭の住宅」

周りの環境が家をつくる

諸江さんは、どんなコンセプトで住宅を設計されているのですか?

諸江さん

自分のコンセプトというよりは、土地の条件に応じてコンセプトは変えています。全物件について、隣3軒くらいの街の模型を段ボールで作っているんですよ。

エーッ!どうしてですか?

諸江さん

それによって、隣からどんな視線があるか、影がどう落ちるか、距離感をどう取ったらいいか、どうやって光を入れるかなど検討しているんです。

周りの環境が家をつくるんですか?

諸江さん

環境によって配慮するところが変わってきます。それから、今はこれがいいと思っていても、時間が経つと、建築家の考えも、お施主さんの考えも変わっていくと思うんですね。それに対して土地の環境は変わりにくいということもあります。

確かに…。

諸江さん

一見あまり特徴のない敷地でも、読み解けばいろいろ小さな差があります。それを引き出して描いていくような感じです。

大きな窓をつくりつつ、カーテンをせずに生活するには?

お施主さんのご希望もあるでしょうが、住みよさという点ではどういったことを大事にされていますか?

諸江さん

当たり前のことですが、採光と通風です。冬場の日射熱をどうやって取り込むか。でも南に窓をあまり大きくとると、外からの目を気にしてカーテンを閉めがちになってしまう。南面に大きな窓をつくりつつ、でもカーテンをせずにどうやって生活できるか。そういうことを、ていねいに解いていきます。

こちらは尾張旭の家。道路に面した南側に大きな窓があります。同じ並びにあるほかの住宅より窓はかなり大きいですね。

「外庭」と呼ぶ空間がつくるもの

諸江さん

この住宅は、大きな開口部とリビングのガラスの間に、「外庭」と呼んでいる外部空間があるんです。

この写真のスペース。左手が道路、右手がリビング、階段スペースは外なんですね。

諸江さん

はい。このスペースでワンクッションあって、大きな窓は直接道路に面しているわけではないんです。道路側には身長ぐらいの壁があって、道路を歩いている人の目線ではリビングが見えません。

なるほど。

諸江さん

斜め上からリビングに光が入ります。リビングからは空がよく見えるけれど、道路はあまり見えない。

そうですね。

諸江さん

道路面からみると開放的な家には見えるけれど、人の様子は見えない。全く閉じるのではないけれど、お互い干渉せずに生活ができます。

「外庭」という空間を設けることで、そういうことができたんですね。

中庭でいいのか?

当初のお施主さんのご希望はどんなものでしたか?

諸江さん

中庭がほしいと。

中庭あります?

諸江さん

ファーストプランは中庭がありました。敷地がけっこう広いので、中庭はつくれるんです。それは気に入ってもらえたんです。

だけど…と諸江さんは考えたわけですか?

諸江さん

そうですね(笑)。中庭って本当に使うのか? 季節がいいときは使いますけど、夏冬は使わないですよね。真ん中にそんなに使わないスペースがあってほんとにいいのかな?とか。

お施主さんは気に入っていらしたんですよね。

諸江さん

中庭にすると、外壁の面積が多くなります。それだけコストも上がってしまう。それに、部屋同士が離れてしまい、家族の関係も離れてしまうのでは?と。

そういう諸々のことを考えて、違う提案をされたんですね。

諸江さん

はい。「中庭で良かったんだけど」って言われましたが。

アハハ。

諸江さん

住宅は、箱にするのが建設費が安いんです。表面積がいちばん小さいですから。ですから、中庭よりは、こういった半外部空間を作った方がいいのではと提案したんです。

外から見た構えもいいですね。

諸江さん

ということでこちらのプランに変わりました。

あえて裏庭をつくる

敷地としては、お隣も裏も住宅が迫っていますね。

諸江さん

そうですね。普通、住宅は北側ぎりぎりまで建てがちですね。でも、そうすると、裏の家は日当たりが悪くなる。家というのは、その人だけが良ければいいというものじゃなくて、街全体で良好な環境を得るべきなので、あえて裏庭を取ってあります。

こちらですね。そういう考えは大事ですね。長い間住んでいくのに、近隣クレームはけっこう多いですから。

諸江さん

建った後、やはり裏の方から、「良かったです」と言われたそうです。囲まれているので、目を離してもお子さんが自由に遊べます。また採光という意味でも、北側からもけっこう光は入るんですよ。

家の中にも庭みたいな空間

庭がいくつかある感じですね。まず駐車スペースのある前庭がある。この写真だと、左側が前庭で、格子戸のある手前が屋根のある駐車場ですね。

諸江さん

はい。道路面と地盤面では70pくらい高低差があって、車は道路面と同じレベルで入ってきます。駐車場からは雨にぬれなくても中にはいれるようになっています。格子戸の向こうが外庭です。

この写真は2階のテラスから見たところで、右手の階段があるところが外庭。外と中の緩衝地帯というか、中間的は空間ですね。

ここは玄関から外を見たところですね。家の中からの眺めもいいですね。本当にオープンで明るい。

諸江さん

外庭から少し上がって玄関があって、外庭に面してリビングがあります。

こちらの写真、リビングから玄関方向を見たところですね。左手のガラス窓の向こうが外庭。玄関が見えます。すごく開放的ですが、外の目は全く気になりません。右手がダイニングと奥にキッチン。右側に裏庭が見えます。

諸江さん

こちらは逆方向から見たところです。右のガラスの向こうが外庭で、駐車場に続く格子戸が見えます。正面の階段を少し上がったところに水廻りがあります。

スキップフロアになっているんですか。しかし、風通しは抜群でしょうね。ビューンって。

諸江さん

はい(笑)。

真ん中の天井は? ちょっと変わっていますけれど?

諸江さん

建物が大きくなってしまうので、光を取れるようにグレーチングといって穴が開いた天井というか、床にしているんです。

んん?

諸江さん

こちらが2階です。トップライトになっていて、光と風が取り込める。家のグレーチングの床から、1階にそれらが降りていきます。家の中にまた庭があるような感じです。

なるほど!

南にある明るい洗面

諸江さん

少し上がったところにある和室と洗面です。和室は北側の落ち着いたところに。水廻りは南にあって、明るいです。

洗面からテラスに出られるんですね。

諸江さん

お風呂はハーフユニットといって、下だけがFRPで防水もしっかりしている既製品で、上は自由に作ることができるものです。上はタイルを貼ったりガラスにしたりしています。コストも抑えられます。

これは中2階から見たところですね。

諸江さん

そこから少し上がると、先程ご紹介した2階。主寝室と子ども室。子ども室は将来は2つに分けられます。水廻りのテラスと主寝室のテラスと、テラス同士、目線がつながります。玄関を入る人がここから見えたりもします。

探偵団 そういったことも含めて、外と中との境界をスパンと切るのではなくて、何というか、グラデーションのようになっている。そして、外からの視線は全く気にすることなく、家の中からは外がよく見渡せる。オープンな家というのは、そういう意味だったんですね。
次回もまた違う「開放的な家」をご紹介いただきます!よろしくお願いします。

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